コンクリートには泥沼はない
昇りエレベータのドアが開いた。走って乗り込んだ。男も乗り込んできた。さっきまで、旧庁舎で私の正面に本課の人事担当が二人。私の右横に男が座っていた。もちろん、面会に来た私の方が末席で、それはまるで、裁判官二人と検事、そして被告人の私のようだった。
そもそも、私は現在過労とストレスのため、体重が激減し、めまい、発熱の症状があり、漢方薬を中心に治療中だ。それにも関わらず、裁判官の一人は
「心療内科ではなく、精神かとか神経科の病院にかかってはどうですか?」と言った。
裁判官は、私の親の血や親戚の血、遺伝を疑っているのか?脳に器質異常があるとしたら、私を産んでくれた母が難産だったから悪いと言っているのか?神奈川県は、追いつめられた人間をさらに追いつめるためにこの人たちを雇っているのか?泪が粒となって資料の上に落ちた。
この面会は、私を過労に追いやった者について私が提出した資料を全て裁判官も見ていると検事が言ったから、私はそのつもりで被告人席に座ったのだ。
いや。そもそも、被害者は私であり、私が被告人席に座らされること自体、おかしな話だ。裁判官は資料の提出はなかったと言い、検事は黙っていた。私が予定していた答弁は出来るはずがなかった。裁判官と、本当の加害者が顔見知りだったのだから。これは仕組まれた罠だったのかも知れないと思う頃には、面会は修了していた。
「今日のは、ダメ。全然ダメ。なんなの、この前のスズキの時のほうがうまかったじゃない」検事だった男が言った。
今日のはダメ?私は資料が提出してあると思っていたのに、この男が話を助けてくれると思っていたのに、資料については黙りを決めておいて、私に何を期待していたのだ?そして、私は、この男に何を期待していたのだろう。
12階にエレベータがつくと、すぐさまトイレを探した。左手前方にトイレを見つけて男を巻くようにトイレの個室に入った。
女子トイレでは手出しの使用のない男は、トイレを利用する女性に質問をしていた。
「飛び降りられるような窓はありませんよね?」
「ええ。」
ふふ。私は過労で痩せたため、15センチの幅があれば身体を抜き出すことが出来る。足も高く上がるから、あの小さな小窓から出ることは十分に可能だ。
男たちだけで、一人だけ末席に座らされながらの面会。裁判のように思い圧力を感じていた。どうして誰でもいいから女性を置かないのか?どうしてドアを1センチでいいから開けて置かないのか?廊下の電気が消えていたと言うことは、この部屋は人通りが少ないと言うことだ。
ああ、どうして授業をしないで平気なスズキを精神科に連れていかずに、過労で漢方薬で体質改善をしながら熱を下げようとしている私を責めるのだ?
裁判官は言ったのだ。報告がなかったから、知らないと。本来なら弁護人のはずだった検事も、今まで人間関係の中で自分でそれで良しとしてきたから、自分の責任だと言い放った上に、今日の私はダメだという。どういうことだ?
トイレの個室から、ブログを更新した。母にメールをした。そして、外に出るために窓枠へ手をかけた。
私は高所恐怖症だ。でも、どうしてだろう?ここから見下ろす景色はきれいだ。3方をビルに囲まれ、唯一開いている空間は小さな道に面していた。目線を上に移せばきれいな空。その下には海。
私の高所恐怖症は解消されたんだ!3方がビルなら、あの、テレビでよく見るブルーシートも張りやすいだろう。
ああ、靴を履いたまま窓枠に立ってしまった。でも、靴を脱いでから降りましょうなんて決まり事はないよね。髪はちゃんと1つにまとめてあるし、コートもきちんと着た。お気に入りのガルシアマルケスのバッグはファスナーで締まっているから持ち物が散らばることもない。ただ。今日に限ってスカートだったのは失敗かなぁ。ああ、どうせなら折り畳みの傘を持っていればよかった。子どもの頃に憧れたメアリーポピンズになるチャンスだったのに。
さすがに用意周到な私も、突然の事項には弱かったって事かな。
県庁に雇われて神奈川まで来て、県庁に勤める職員に人生を潰されて、だから、ここから泥沼になるはずのないコンクリートとアスファルトしかない場所に移動するのよ。
ああ、これで解放される。
ああ、これでようやくしあわせが手にはいる。


Comments